極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
すると、「ここを擦りむいてるぞ」と指摘された。

それは手首の傷で、縄で縛られていた際に擦れてできたものである。

濡らせばしみるかもしれないが、今は痛みも感じない程度の軽い傷だ。

実乃里としては少しも気にしていないのだが、龍司は腹立たしげに顔をしかめる。


「女の肌に傷をつけやがって……。手加減せず、もっと痛めつけてやればよかったか」


後悔している様子の龍司に、一尾が助手席から指摘する。


「若頭、死なせたら後始末が面倒ですよ」


その声は笑いを含んでおり、他のふたりの下っ端たちも同調して笑い声をあげた。

実乃里だけはヤクザのノリについていけず、「あの、これくらいの擦り傷はどうってことないので……」と掴まれている腕を引っ込めようとする。

助けてもらったことには感謝しており、強い龍司は眩しいほどに魅力的だとも思うが、やはり極道は怖いという感情は拭えない。


(時々忘れそうになるけど、私みたいな一般人が近づいちゃいけない人なんだよ……)


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