極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
龍司が実乃里の腕を離したその時、ガコンと鈍い音がして、急に車体が右に傾いた。

左の前輪がなにかに乗り上げてしまったようで、「キャッ」と悲鳴をあげた実乃里の体は龍司の方へ流され、彼の胸と左腕に抱き止められた。

横転せず、止まりもせず、すぐに車体は平行を取り戻したが、ハンドルを握っている二山は「なにやってんだ!」と一尾に叱られていた。


「すいやせん! コンクリートブロックに乗り上げたみたいです」


二山はそのように説明し、「置いた奴、誰だよ。危ねーな」と舌打ちしていた。

実乃里は龍司の左胸に頬を当て、鼓動を乱している。

異性との交際経験がない彼女なので、男性とこんなに密着したのは初めてである。

驚き戸惑い、早く離れなければと理性が警告を出しているが、大胸筋の盛り上がりとその硬めの弾力を魅力的に感じ、頼りがいのありそうな力強い腕にもう少し抱かれていたいと思ってしまう。


シャツから微かに香る汗と男物の香水は、媚薬のように実乃里の芯を熱くした。

蜂が蜜に誘われるように、ついつい龍司の体に腕を回してしがみつくと、「どうした?」と彼に問いかけられる。


「あの、もう少しだけこのままでいたいんですけど……駄目ですか?」

「平気そうな面をしていたのに、今頃恐怖が湧いたのか? 仕方ないな、着くまで抱いていてやる」


< 77 / 213 >

この作品をシェア

pagetop