極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
杉谷に掴みかかった龍司が、なにかが入ったビニールの小袋を杉谷の内ポケットに入れていた件についてだ。
秘密の受け渡しが済めば、龍司は怒りを鎮めて帰っていった。
杉谷が龍司を挑発したのも、龍司が彼らしくない怒り方をしたのも、演技だったのではないかと実乃里は疑った。
けれども半月ほども経てば、その仮説に自信がなくなる。
見間違えであったのではないかという気にさえなっていた。
(極道の若頭と組対の刑事だよ。お互いに敵視していても不思議じゃないでしょう。裏でなにか取引しているんじゃないかと思うなんて、ドラマの影響かな。最近は刑事ものを見ていないけれど……)
鉢合わせを恐れ、龍司が来店しないかと気忙しくしていた実乃里だが、杉谷は一服してコーヒーを飲み干し、時刻が十五時五十五分になると代金を払って出ていった。
客がいなくなった店内で、実乃里はほっと息をつく。
カウンター内ではマスターが、「拍子抜けしたなぁ」と笑い出し、調理場から出てきた洋子も笑顔を見せる。
「龍司さんが来なくてよかったわ」
杉谷のコーヒーカップと灰皿を下げた実乃里は、眉を寄せてふたりに言う。
「刑事お断りのステッカーをドアに貼るのはどうですか?」
秘密の受け渡しが済めば、龍司は怒りを鎮めて帰っていった。
杉谷が龍司を挑発したのも、龍司が彼らしくない怒り方をしたのも、演技だったのではないかと実乃里は疑った。
けれども半月ほども経てば、その仮説に自信がなくなる。
見間違えであったのではないかという気にさえなっていた。
(極道の若頭と組対の刑事だよ。お互いに敵視していても不思議じゃないでしょう。裏でなにか取引しているんじゃないかと思うなんて、ドラマの影響かな。最近は刑事ものを見ていないけれど……)
鉢合わせを恐れ、龍司が来店しないかと気忙しくしていた実乃里だが、杉谷は一服してコーヒーを飲み干し、時刻が十五時五十五分になると代金を払って出ていった。
客がいなくなった店内で、実乃里はほっと息をつく。
カウンター内ではマスターが、「拍子抜けしたなぁ」と笑い出し、調理場から出てきた洋子も笑顔を見せる。
「龍司さんが来なくてよかったわ」
杉谷のコーヒーカップと灰皿を下げた実乃里は、眉を寄せてふたりに言う。
「刑事お断りのステッカーをドアに貼るのはどうですか?」