極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
彼女は、よく言えばポジティブで、悪く言えば向こう見ずなところがあるため、後々困る展開に陥ることがたまにある。

今も浮かれて、恋愛へのステップを一段上がった気持ちになり、笑顔でクールなイケメンに近づいた。


「空いたお皿、下げますね」


皿を片づけるのはついでで、サンドイッチを作ったのは自分だと主張しようとした実乃里だが……彼は新聞紙を適当に畳むと、スラックスのポケットから長財布を出して二千円をテーブルに置いた。

「釣りはいらない」と言い残し、そのまま席を立って足早に店を出ていってしまった。


(しまった。早く帰れと催促したように思われたのかな。お話したかったのに……)


残念に思う実乃里は、口を尖らせる。

けれどもすぐに笑顔を取り戻して、気持ちを立て直した。


彼は常連のようだから、またすぐに会えるだろう。

次の来店時には必ず会話を膨らませようと、前向きに意気込む実乃里であった。


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