極艶恋～若頭は一途な愛を貫く～
一尾たちは、龍司と行動を共にすることが多い。

彼らに極道らしい振る舞いを見せ、潜入捜査官であるという疑いを一寸も抱かせないようにと考えての演技であったようだ。

実乃里には不自然にも思えたが、あの時の一尾たちは慌てて龍司を止めていたので、うまく騙せているのだろう。

マスターと洋子、常連客たちも怯えていたので、演技が下手だという指摘は違うのかもしれない。


その他にも、実乃里には合点がいくことがあった。


「あの、龍司さんが刺青を入れられないという話なんですけど、アレルギーというのも嘘なんですか？」


それは銭湯のアルバイトを頼まれた時に聞いた話だ。

一尾たち下っ端三人は、極道らしい彫り物をしていたのに、龍司の背中にはなかった。

その理由を、塗料アレルギーで死にかけたからだと説明された記憶がある。


龍司は苦い顔をしてため息をついている。

バレてしまったかと言いたげだ。

杉谷はクッと短く笑うと、「見かけによらず鋭いお嬢ちゃんだ」と褒めてくれた。

本当はアレルギーではなく、刺青を入れずにいても極道たちに指摘されないようにするための作り話であったということだろう。


「それじゃ、もしかしてアレもですか？」


龍司が猿亘組に入った経緯をマスターから聞いた時も、実乃里は疑問を感じていた。

高級クラブで組長が襲撃を受けた際、たまたま酒屋の配達の仕事でそこを訪れていた龍司が、三十人もの武装集団を相手に素手で追い払ったという話だ。

半グレ集団から助けてくれたことで、龍司がとてつもなく強いと実乃里は理解し、納得したことにしていたが、やはり違和感は残る。

それは、話ができすぎているという違和感だ。


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