恋のカフェタイム
 ヘトヘトなはずの足で夜の道を歩く私。なんて虚しい、寂しい生き物だのだろうか。
 行く先は…とりあえず実家かな。マンションからちょっと歩くけど遠くはないし。
 時計を見ると、21時を回っていた。眠い、早くお風呂に入りたい。なにもかも忘れたい。

「っわ!?」

 うとうととしながら、自業自得なわけだがフラフラと歩いていたら躓いて足をグキッと捻らせた。

「うぅ…痛い」

 足も心も全部が痛い。

 やだ、年甲斐もなく涙が出てきた。


 そして、あんなに幸せそうだったはずのスマホのロック画面を急遽適当に拾った画家フェルメールの描いた肖像画にした。
 三年間、信じて愛してきたのに。ひどいよ…ひどい。というか雅弘はバカなの?わざわざ彼女と同棲してる家に他の女連れ込む?そんなの「あ、俺浮気してるんだてへ」ってアピールしてるんじゃん。

「…う、疲れた」

 足もパンパン、捻らせて痛い。もう歩きたくない。家まであと少しなんだけど…

 そう思ってふとした灯りが視界に入った。まだこんな時間でもオープンしているのかその灯りはカフェのものだった。

「あんなところにカフェなんてあったっけ?」

 久しぶりにこの道を通るし、意識せず歩いていたから気付かなかった。それとも最近建てられたばかりなのかな。

 ……ちょっと寄っていこうかな。足も痛いし休みたい、なにか飲みたい。というかなんでもいいから癒されたい。
 そう思って痛む足を進めて、カフェに近付いていく。

 しかしその時

 ──カランカランッ

「…え」
「…ん?」

 鐘の音を鳴らしながらお店から出てきた店員さんが扉にかかってある【open】と書かれてあったプレートを【close】に裏返してしまった。

 閉店…ですか…


「あ、あの…終わりですか」
「あー…はい…」
「で、ですよね!あは、は…」

 よし、帰ろう。


 ──カランカランッ

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