恋のカフェタイム
 ───…

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 ん…いい香り。淹れたてのコーヒーの匂いをスゥッと嗅ぐ。本当にいい匂いだし、どことなくホッとひと安心する。

 店内も見た感じ少しレトロ感があって、でもアンティークな装飾とか机や椅子などの家具がお洒落で素敵。
 いい雰囲気、私好きだな、こういうお店。

「足、大丈夫ですか?」
「え?」
「いや…引き摺って歩いてたんで…」
「あ、あぁ…さっき少し捻って…」
「ちょっと待ってて、救急箱持ってくるんで」
「え!?そ、そこまでしてもらわなくても─…行っちゃった…」

 ふぅ、と一息ついて雪崩れるよう腰を深くに椅子へとつく。
 それにしても優しいな、ここの副店長さん。穏やかな口調、柔らかな表情、優しげな甘い声。若干の垂れ目で女子が羨むほどの二重と涙袋にキリッとした眉毛。それでもどこか和やかな顔をしている。

 うん、とりあえずイケメンだ。


 それにしても…

「はぁ~…」

 浮気されていたなんて、ホントに最悪。今日一番のショックな出来事だ。今までの愛はなんだったんだろう、同棲までして結婚もそろそろかなとか勝手に期待しちゃっていたし。裏切られたんだ。雅弘の奴に。

 相手の女、可愛かったな。私とは違って派手なギャルな感じの子。

「…っ、ぐす」

 やだ…また涙が。
 涙をごしごしと勢いよく拭って美味しいコーヒーを一気に飲み干す。
 忘れなきゃ、忘れないと。新しい恋をしてこの気持ちを誤魔化そう。いや、そう簡単にはいかないだろうけど。

 でも、やっぱり。


 まだ、辛いよ。

 雅弘のバカ。
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