嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
「緋色ちゃんからキスしてくれると思って楽しみにしながら待っていたのなぁー」
「そ、そんな事しないよ!」
「そうなの?残念だなぁー」
泉はそう言うと緋色の手を掴んだまま、起き上がった。
そして、今度は真剣な顔で緋色を見つめる。緋色は見上げるようにその綺麗な顔を間近でみつめ、ドキッとしてしまう。
「女の人って、なんの事?」
「え………」
「気になる事があるなら教えて。何でも言って欲しいんだ。………緋色ちゃんが気になる女の人って………何?」
「それは………」
思いもよらない事で、その話を聞くチャンスが出来てしまった。
お風呂から上がった体はクーラーの冷気で冷めてしまってもいいはずなのに、先ほどから暑いままだった。
愛音に言われたことを思い出す。
泉は緋色を選んだ。彼を信じて。
その言葉が、緋色の背中を押してくれた。
緋色は彼の綺麗な瞳をジッと見つめながら、口を開いた。先ほどから喉はカラカラだったけれど、今は特に口が乾いてしまっている。
それでも、ゴクンッと唾を飲み込んでから、緋色は言葉を発した。