嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
いつものように優しい笑みで緋色を迎えた泉は「緋色ちゃんを幸せにします。」と、望に強く真っ直ぐとした彼らしい声でそう言うと、深くお辞儀をした。それを見て、望はゆっくりと頷いた後、緋色の手を取って泉の腕へと送ってくれる。それが、まるで「幸せになってきなさい」の言葉通りのようで、緋色はまた目頭が熱くなった。
ベールで薄く隠された表情。
涙がこぼれそうだったけれど、俯く事なんて出来ない。今はまっすぐ前を向いて歩くのだ。
そうすると、視線の先には綺麗なステンドグラスが色とりどりに光っており、緋色や泉を虹色に照らしてくれた。純白のドレスも、レースのベールも、ステンドグラスのように輝いていた。
「2人で幸せになろう。………緋色ちゃんの事は俺が守るよ」
「…………うん」
緋色は視線を少しずらして、泉を見る。
それはとても幸せな表情で、緋色からの「好き」と告白した時と同じ顔をしていた。
それを見ただけでも、緋色は幸せだなと実感出来た。
沢山の人ではない。けれど、大切な人たちに祝福されるこの時間は、緋色にとって何よりも大切な思い出になったのだった。