嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも



 緋色は昔からキャンドルの光と、時計の針の音が苦手だった。キャンドルの光は見ないようにしていたし、時計の針の音もデジタル時計や電波時計が多くなり耳にする機会がなかった。
 それに今気づいた事だが、泉の家にもこの2つは置いていなかった。

 そして、緋色の反応を見ても、彼は落ち着いて対応してくれたようだった。
 緋色が苦手なものを泉は知っていた。
 緋色はそう理解した。


 「やっぱり泉くんは、私の事知ってたんだなー。何で隠すんだろう?」
 

 緋色はそう呟きながら、ソファの背もたれに頭を乗せて少し考えてみたものの答えは出なかった。


 その時、「ぐーー。」と間抜けな音が聞こえた。緋色のお腹の音だった。昨日の夜から何も食べていないのだ。
 緋色は、彼が準備してくれた朝食をありがたくいただくことにした。
 

 ご飯を食べた後は、シャワーを浴びるとそれだけで疲れてしまったのか、ウトウトとしてしまった。
 お昼過ぎには帰ってくると泉は置き手紙に書いてくれたので、待っていようと思ったけれど、緋色はいつの間にかソファに横になって寝てしまっていた。




< 139 / 216 >

この作品をシェア

pagetop