嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも




 「…………ごめん」
 「なんで………何で教えてくれないの?」
 「………緋色ちゃん。それは、言えないんだ」
 「どうして!」


 彼の言葉で、緋色の溢れていた想いが我慢出来なくなり、流れ出るように大きな声が出た。


 「どうして教えてくれないの?どうして嘘つくの………緋色くんも、お父様も秘密ばかり!それで、何を信じればいいの?」
 「緋色ちゃん、俺は…………」
 「来ないでっ!」


 緋色に触れようとした手から逃げるように声を出し、数歩後ろに下がって彼から逃げる。

 すると、泉は悲しんだ顔を見せてそのまま止まった。


 「私は何を信じればいいかわからないの。記憶がないから、あなたを好きになって信じて生きていけば大丈夫だって思ってた。それなのに………あなたは、私に嘘をついていた。その嘘さえも、信じたいって思って待っていたのに………理由を教えてくれないなんて、そんなのずるいよ。」
 「…………ごめん………」


 謝ってばかりで話すつもりもない泉を見て、緋色は涙が溢れてきた。
 もう、彼の傍には居られない…………。


 「泉くん。………事故で記憶がなくなる前にあなたと恋人だったんだよね?」
 「………………あぁ」
 「私、何もわからなくて、怖かったよ。何が本当で、誰が本当の知ってる人なのかわからなくて怖かったよ。……………恋人だったら、どうして助けてくれなかったの?………どうして、会いに来てくれなかったの………?」
 


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