嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも



 泉は、彼女が落とした紙袋を拾い上げた。
 先程から周囲には甘い香りが漂っている。馴染みのある香りだった。
 その袋には何が入っているのか、泉にはすぐ
わかった。

 中を見ると、予想通り泉が使用している香水の割れた瓶が入っていた。彼女が会社を出た後に香水を買いに行ったのだろうと思っていた。

 その他に、何かラッピングされた物が入っているのに気づいた。香水で濡れてしまっているそれを泉は開けてみる。
 すると、そこにはピンクシュガーと同じロゴが入った、ボディーソープとハンドクリームが入っていた。それを見て、泉はハッとした。


 彼女が残業だと嘘をついて、買い物をしに行っていた。何故、泉に内緒にしていたのか。泉の好きな香水と同じシリーズを買ってラッピングをしていたのか。
 それを見て、何も気づかないほど泉は鈍感ではなかった。


 「緋色ちゃん…………」


 泉はその紙袋を家の庭に置き、やっとの事で動き始めた。

 緋色が去って行った後を追いかけた。





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