嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
その男が緋色の体を持ち上げて、無理矢理でも車に入れようとした時だった。
緋色の様子が、一転したのだ。茫然と1点を見つめ、口を開けており、体には力が入っていなかった。
異変に気づいた銀髪の男が、怪訝な顔で緋色の表情を伺う。
「いや………いやーーーー!!こわい、助けて…………っっ!ぁぁぁ…………思い出したくないっっ!」
「………何だ、こいつ!?やっぱり薬で頭おかしくなってんじゃねーの?」
銀髪の男は緋色が騒ぎ出した事に驚き、すぐに緋色から手を離した。
すると、緋色は道路にしゃがみ込み頭を抱えて泣き始めた。
「やだ………やだ…………。こんなところに居たくない…………こわぃこわい…………」
「だめだ………そいつの事は置いてくぞ。今ので、人が気づき始めた」
「あ、あぁ………」
車の中にいた強面の男が、咄嗟にそう判断すると車を降りて運転席に向かう。銀髪の男は、緋色を車の傍から離そうと腕を引っ張ったに、足音が聞こえた。
「おまえらっ!!何をしてるっ!」
「あぁ?………やべぇ、警察だ…………!」
2人の視線の先には、大声を張り上げて自分達の元へと駆け寄る2人の警察の姿が見えた。制服を着て、手には警棒を持っていた。
緋色が騒いだ声を聞きつけた来たのだろう。車のすぐ傍まで来ていた。後ろには彼らの仲間と思われるパトカーまで来ている。