嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも



 「おい、早く車に乗れ!逃げるぞっ!女は置いてけっ」
 「わかってるっ!」
 「待て!逃げるな!」


 銀髪の男が車に乗り込んだ途端に、白のワンボックスカ―は勢いよく走り出した。


 「椋先輩!どうしますか?」
 「お前はパトカーに乗ってあいつら追いかけろっ!」
 「了解しました!」
 「遥斗、逃がすなよっ!」


 若い方の警察官は手を挙げながら走りだし、すぐにパトカーに乗り、緋色を襲った車を追跡し始めた。

 椋と呼ばれた黒髪の男は、座り込んで震える緋色に駆け寄り声を掛けた。


 「大丈夫ですか?どうしました?」
 「いやっ!!こわいこわいこわい…………思い出したくない………」
 「………何があった?俺は警察だ…………」
 

 警察の声掛けが耳に入らないほど、緋色は混乱しパニックを起こしていた。


 「襲われただけじゃないのか………薬のようでもないし………」
 

 震え怯える女の肩を抱きながら、椋は女性警官を呼ぼうと他の警察に連絡をしている時だった。



< 163 / 216 >

この作品をシェア

pagetop