嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
「緋色っ!!」
その名前を呼ばれた瞬間、座り込んでいた緋色はビクッと体を震わせて声の主を見た。
そこには汗だくになってこちらに向かってくる1人の男性が居た。
「…………ぁぁ………いず、みくん…………」
朦朧とした視線のまま、緋色は彼を見つめた。パニックになっていた緋色だったけれど、彼を見た途端に呼吸も少し安定し、不安そうにしていた表情も和らいだ。
そんな緋色の様子を見て、駆けつけた警察官も彼女の知り合いだとわかった。
「どうしたんだ、緋色っっ!」
「この女性の知り合いか?」
「俺の妻です。何があったんですか?」
焦り戸惑いながら椋と呼ばれた警察官に、泉は問いただすと、椋はゆっくりと状況を説明した。
「ここをパトロールしている時に、女性が絡まれてると言われてね。そこに向かう途中に、その女性が大声を出して騒ぎ始めていたんだ。どうやら2人組の男に連れていかれる寸前だったようで、もう1人の警察官が襲った男達の車を追っているよ」
「そう、でしたか…………」
「けれど、どうして君の奥さんはこんなにパニックを起こしているんだ?以前に何かあったのか?」
椋が心配そうに、泉に聞く。泉は震え不安そうに自分を見つめる緋色を抱きしめながら、椋に説明をした。