嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
「彼女を守るためには、強くならなきゃだめだ。もちろん、誰からも守れる力、そしてお金を稼ぐ力、そして彼女に優しくなれる力だ。」
「強く………」
「それが出来て、君が大人になっても緋色ちゃんも好きだというなら、ここに来てくれ。それまで、彼女を大切に守るよ」
「わかった!」
望が渡したのは、「楪 望」と書いてある名刺だった。彼の会社や電話番号が載っているものだった。
泉は宝物を貰った時のように目をキラキラさせながら、その紙を見つめていた。
「あぁ、でも急がないとダメだよ。彼女が他に好きな人が見つけてしまったら、君は恋人にはなれないからね」
「………わかった」
「泉くーん!楪さーん!何を話しているのー?」
庭で話し込んでいると、施設の建物から出てきた緋色が大きな声で2人を呼んでいた。振り向くと、緋色は笑顔で大きく手を振りながら走ってきていた。その後ろには上品に微笑む茜の姿があった。
「緋色ちゃん………」
泉は咄嗟に貰った名刺をポケットに入れた。
「今の話は彼女達には内緒だよ」
望はそういうといたずらっ子のように、ニヤリと笑った。もともと緋色には話すつもりはなかった事だが、男同士の約束となれば、さらに破ることは出来ないなと、泉は思った。