嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
「楪さん…………」
『緋色ではないんだ。私から君に話があったんだ。聞いてくれるかな』
「………はい」
電話口から聞こえてきたのは、望の低い声だった。いつもの優しい声ではなく、どこか暗いように聞こえた。
「話っていうのは何ですか?………緋色ちゃんの事ですか?」
『…………あぁ。泉くん、落ち着いて聞いてくれ。』
電話口で、望が1度言葉を止めた。
躊躇っているのか、それとも自分を落ち着かせようとしていたのか、泉にはわからない。けれど、一呼吸置いた後に望は話出した。
『緋色が誘拐された』
その言葉はとても残酷すぎて、泉の頭で理解するのに時間がかかってしまった。それぐらいに、予想出来ない言葉だった。
「…………え…………」
『緋色は学校帰りに図書館に行くといってね。その後から行方がわからなくなったんだ』
「な………何言ってんだよ、緋色ちゃんが誘拐なんて………」
『本当の事なんだよ………泉くん』