嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも




 泉はその瞬間、嬉しさがこみ上げてきて、思わず涙が流れそうになった。それを隠すように、緋色は泉の腕を引き、抱き寄せた。


 「………あっ……あの………」
 「………やっと、やっと俺の彼女になってくれたんですね」
 「………はい」


 彼女の声が震えて身体に伝わってくる。
 抱き寄せている身体が温かく、彼女はこんなにも柔らかくていい香りがして、抱きしめると気持ちよくて幸せになれる存在なのだ、と初めて感じた。


 「すごくすごく幸せです。………だから、少しだけ、抱きしめさせてください」
 「…………私も嬉しいです。その………だから、しばらくこうして貰いたいです」


 こんな可愛い事を言ってくれるのが彼女というものなのだろうか。
 いや、緋色が特別なのだろう。
 そんな、惚気のような物を感じながら、泉は彼女と恋人になった幸せを噛み締めていた。




< 192 / 216 >

この作品をシェア

pagetop