嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
「ねぇ、試合前にこんな事言っていいのかわからないんだけど。………話し聞いてもらえないかな」
「うん?どうしたの?」
近くの駅へ向かう車の中で、緋色はそう話しを切り出した。何の話だろうか?と泉は気になり、彼女の答えを待っていた。
すると、とても嬉しそうに彼女は話しを始めた。
「泉くんが白碧蒼だって少し前に聞いてから、泉くんは大好きな本を仕事にしてるんだって思ったら、私も羨ましくなった。………今のOLの仕事は嫌いではないけど、好きな仕事でもないの。だから、………私本の仕事がしたいんだ。思い付くのは本屋さんとか司書さんしか出てこないけど、でも、それを考えるだけでもワクワクしてるの………。ねぇ、泉くんはどう思う?」
緋色は目をキラキラはさせながら、そんな自分の夢を語った。
自分が彼女に、影響を与えたのかもしれない。そして、楽しそうに語る彼女がとても愛しく思えて、泉は車が停車した後にしっかりと緋色の方を向いた。
「いい事だと思う。緋色ちゃんがやってみたい事に挑戦してみたほうがらいいよ。俺も応援するから」
「泉くん………ありがとう!」
緋色はニッコリと微笑んだ。
そして、少し恥ずかしそうにしながら、泉に体を寄せた。泉が驚いている中、緋色は彼の頬にキスをした。緋色は自分からそんな事をするようなタイプではなかったので、泉は目を大きくして彼女を見ると、いたずらをした後の子どものように無邪気に笑っていた。
「………相談に乗ってもらったお礼と、明日勝つようにのおまじない。ありがとう、頑張ってね」
「………ありがとう」
泉は彼女の顔が見れなぐらいに恥ずかしさを感じ、手で口元を隠しながら、視線をそらして返事をした。すると、緋色は嬉しそうにフフフッと笑った。