嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
「おまえも不審に思っただろ?あの男が、女を抱えて部屋に入ったはずだ。もしかしたら、引っ張って歩いていたか?……どっちにしろ、おかしいと思っただろ?」
「そ、それは………」
「あの男は1回誘拐で捕まってんだ。彼女はそんな男に連れていかれた!」
「ですが…………」
まだ口を割ろうとしない男に、緋色は声を細め、先程よりも暗い声で彼の耳元で言葉を落とした。
「誘拐だ。………これで、緋色に何かあったら俺はおまえを一生許さない」
「っっ…………」
怯えたように目を大きくして泉を見た後、その男は少し考えた後に、口を開いた。
「…………3015室…………です」
「………悪いな。ついでに、ドアも開けてくれ」
「……………」
泉が彼から手を離し、部屋に続くロック付きのドアに立つ。普段は鍵がないと開かない作りになっているが、コンセルジュが開けたのだろう泉が立っただけで開いた。
「警察が来てから行ったほうが………」
すぐに彼女の元へ向かおうとした泉にボディーガードの男が慌てて声を掛けた。けれど、泉はそれで足を止める事はなかった。
「緋色が待ってるんだっ!!おまえはここで警察来るの待ってろっ」