嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
大声で返事をすると、泉は駆け出した。目の前のエレベーターが開き、泉は30階のボタンを押した。ゆっくりと上がるエレベーターがもどかしく感じる。その間も緋色はどんな事をされているのか。考えるだけでも、頭に血が上っていくのを感じた。
30階のボタンが点滅して、ゆっくりとドアが開く。泉はすぐに駆け出して3015室を探した。すると、廊下の奥にその部屋があった。
すぐにインターフォンを押す。
中からベルの音が聞こえる。しばらく待ったが何も聞こえない。何度かボタンを押していると、ドタドタ歩く音が聞こえた。
泉は、ふーっと小さく息を吐いて、後ろ足に力を入れた。
「………なんだよっ!うるせーなっ」
ガチャッとドアが開いた瞬間、泉はそのドアを片手で押さえ、そのまま相手に飛びかかった。男は驚いた表情のまま、よろけ体を壁にぶつけた。
「いっっ!!」
「緋色はどこだっ!」
「………なっ、おまえ…………まさか………」
泉の顔を見て、来客者が誰かわかったのだろう、男の顔が真っ青になった。
「なんで、おまえがここにいんだよっ!さっさと帰れ!あの人形は俺の物だ!昔からずっと目をつけていたんだ、誰にも渡すものかっ!」
「………緋色はおまえの人形なんかじゃないんだよっ!」