嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも




 「ねぇ………泉くん。2回目に誘拐された後はどうしていたの?」
 「あぁ………。そうだね。それを話していなかったね。………君の記憶の混濁があって不安定だったから、恋人である俺が近づいたらまた、何かが、きっかけで辛い事を思い出すかもしれないと言われたから。しばらく緋色ちゃんから距離を置くように医者に言われたんだ」
 「…………そう、だったの………」
 「でも、俺は緋色ちゃんの傍にずっと居たんだよ。」
 「え?」


 緋色は驚き、泉を見るとクスクスと笑っていた。そして、頭を撫でながら「バレてなくてよかった」と、笑った。


 「実は、緋色ちゃんのボディーガードをしていたんだ」
 「え……えぇ……!!」
 「他の男に緋色ちゃんを1日中見られてるのは元々嫌だったんだ。だったら、俺が見ようって望さんにお願いしたんだ」
 「え、でも………仕事は………」
 「君が仕事に向かうときに警護して、会社に着いたら、ボディーガードの交代。その後空手の稽古をして終わったら、君の会社へ向かってたんだよ。夜中まで見たら、またボディーガードと交代、って君を見守ってた。だから、後輩の相談を聞いてた時も、君の会社の近くのカフェにしたんだ。まさか、君に見られているとは思わなかったけどね」


 泉は、微笑みながら教えてくれた。
 自分の事を彼が守ってくれていた。そして、いつも傍に居てくれていた。それが嬉かったし、気づかなかった自分が情けなかった。





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