嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
緋色が焦って、黙り込む父に説得しようとした。けれど、驚いて固まっていた望の顔が、ニヤリとした微笑みに変わった瞬間。緋色は悪い予感がした。
これは望が面白い事や、何かいい考えが決まった時の顔なのだ。
「お、お父様………?」
「なるほど。泉くんと緋色が結婚か。」
「突然過ぎるわよね。私たち出会ったばかりだし。」
「………いい考えだ。泉くんが結婚相手ならば、私も安心する。」
「…………え?」
「緋色、いい相手を見つけたな。先ほどの見合い相手より数倍いい結婚相手だろう。」
「お、お父様、私は………。」
緋色が唖然とする中、とても楽しそうに微笑み緋色と泉を見ていた。それを見て、泉もホッとした表情を見せていた。
「望さん。ありがとうございます。」
「ちょっ、ちょっと………。」
「これはおめでたい事だな。緋色、泉くんに幸せにして貰うのだぞ。」
「お父様、私はまだ結婚なんて。」
「緋色、おめでとう。」
「お父様、話しを聞いてくださいー!」
緋色は父親に詰め寄り、必死に言葉を掛けるけれど、望はとても満足そうに微笑むだけで、話しみ聞いてくれなかった。
あっという間に父親公認の関係になってしまい、緋色は焦りと戸惑いと不安な気持ち持ちながらも、新しい出会いに少しの期待を感じていた。