嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
安心して微笑んでいたのだ。
そんな彼の笑顔の意味がわからずに、緋色は泉が触れる髪をジッと見つめていた。
「緋色さん。俺は確かに結婚の理由はありえない事かもしれない。でも、それでも緋色さんじゃないと、結婚したいと思わなかったと思うんだ。」
「どうして………ですか?」
「緋色さん、だから。」
泉の指が髪をとかすように、毛先までゆっくりと下へ移動する。
すとん、と心に落ちる言葉だった。
「緋色さんを好きになりたいと思っています。……いや、なるってもうわかっているんです。………緋色さんにも好きになって貰うように頑張ります。だから、僕を知るために………好きになるために、結婚してくれませんか?」
どうして泉は自分を見る時にそんなに悲しげに見るのだろうか。
そんな風に思いながら、泉の瞳を見つめた。
彼の意思の強さを表すのように、視線はまっすぐで強いものだった。強さの中にも、優しさもある。それは緋色向けられたものだからこそ、緋色は感じ取れた。
誰しもが初対面で出会い、お互いにどんな人なのかを探り合い、そして、知っていく。
そして、いろんな感情を育てていくのだ。
育てるためには、一緒に過ごすことが1番なのだ。
会って初日でのプロポーズ。
緋色の返事は、「私も、………知りたいです。」だった。