嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
泉が乗ってきた車は、緋色でも知っている有名な高級車だった。黒に近いダークブルーで、中は落ち着いたグレーで統一されていた。「少し遠いから、緋色ちゃんはゆっくりしてね。」と言い、泉はハンドルを握った。彼の運転はとても静かで、車に酔いやすい緋色も、気分が悪くなることはなかった。
運転している彼をちらりと盗み見る。泉は半袖の白シャツに黒のチェックのズボンにスニーカーという軽装だった。それを上手に着こなしており、まるでモデルのようだった。
「どうしたの?もしかして、寒かった?」
緋色の視線に気づいたのか、泉はちらりとこちらを見てそう来ていきた。緋色はすぐに視線を逸らして、「寒くないので、大丈夫だよ。」と返事をした。
「そんなに緊張しなくてもいいよ。ドキドキさせるとは言ったけど、少しはリラックスして、ね?」
「うん、ありがとう………。」
すぐに緊張をなくすのは難しいなと苦笑すると、泉は少し考えた後、また口を開いた。
「白碧蒼の名前は泉鏡花からとったのかって、緋色ちゃんは聞いたよね。あれは、名前を考えてた時にたまたま白碧って言葉が浮かんで、意味を調べたら泉鏡花の話に出てくる言葉だって知ったんだ。名前も同じだし、いいかなって思って決めたんだ。だから、偶然だよ。」
「そうだったんだ………。絶対にそこから取ったんだと思ってたんだけど。」