嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
「泣いてる顔も可愛いね。」
「な、舐めないで………!」
「ははは。ごめんごめん。」
全く反省をしていない様子の泉に避難の声を上げるが、彼は楽しそうに笑うばかりだった。
緋色自身何故、自分が泣いてしまったのか、わからなかった。
けれど、それが悲しいからではないのだけは、緋色の心が温かくなっていたのでわかった。
「緋色さん………。緋色さんに、受け取って欲しいものがあるんです。」
そういうと、泉が持っていた小さな鞄から何かを取り出した。
「本当はこんな所で渡すつもりじゃなかったんだけど…………。」
ショッピングモールの広い地下の駐車場。
いくら端で壁に向けて駐車したとは言えど、車も人も後ろでは通っている。けれど、車の中は2人だけのものだった。
泉が緋色に、手渡したもの。
それは光沢のある黒色をした、小さな箱だった。
緋色はそれを見た瞬間にドクンッと大きく胸が鳴った。
ふわりと軽いその箱を見つめる。
ドキドキしながら、その箱の蓋を開ける。
すると、そこにはキラキラの光り輝くシルバーの指輪があった。透明な宝石はダイヤモンドだろう。大きな石が中央についており、それを支えるように繊細なリングがついていた。