嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
「2階にもトイレがあるよ。あとは寝室と、俺の書斎。」
1番広い部屋は寝室。大きなベッドと大きな窓がある。クローゼット以外はサイドテーブルとテレビがある以外は何もないシンプルな部屋だった。泉の書斎は小さかったけれど沢山の本に囲まれた部屋だった。机にはノートパソコンが置かれており、背もたれが長い立派な椅子もあった。
「部屋はあと2つだよ。書庫にもなっている部屋と…………。」
「ここ………。」
緋色は最後の一室に誘われるように向かう。ここは知っている気がする。
「緋色ちゃん?」
彼が自分を呼ぶ声がする。けれど、緋色はゆっくりとそのドアに近づき、自分でその扉を開いた。緊張しながらそのドアの先を見つめる。
すると、そこには何もないただ広い空き部屋があった。
「え…………。」
緋色は何故か喪失感を感じ、悲しくなってしまい声が出た。ここには、何かがあると思っていた。けれど、何もない。それが、とても切なくなるのだ。
「緋色ちゃん………ここは空き部屋だ。」
「そうだね。ごめんなさい、勝手に開けてしまって。」
「いいんだ。………ここは緋色ちゃんの部屋にしたいなと思ってるんだ。」
「そ、そうなんだ。窓も沢山あって、いい部屋だね。嬉しいな。」
「………よかった。」
緋色の様子がおかしかったのに気づいたの、泉も少しよそよそしい雰囲気で話をしてくる。やはりこの部屋には何かあったのかもしれない。
緋色はそんな気がした。