嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも
2話「壊れた眼鏡」
2話「壊れた眼鏡」
手を握る彼は何者なのだろうか?
何故、会ったばかりの人を助けるために彼は緋色の手を引いて走っているのだろうか。
夏になったばかり蒸し暑い昼間。汗を流しながら、動きにくい着物で必死に彼に着いていきながらも、この繋いだ手を離したくない。
緋色は呆然としながら、その男性を見つめていた。
「…………いっ…………。」
先ほどから足の裏は痛んでいたけれど、我慢出来ないほどではなかった。けれど、鋭い石かガラスでも踏んでしまったのか、突然右足の裏に激痛が走り、緋色は足を止めてしまった。
突然止まった緋色を心配して、男は素早く振り向いた。そして、草履を履いていない、白い足袋のままの緋色を見て、驚いた顔をした。
そして、緋色の足元にしゃがみ、「すみません!気づかなくて………。」と、何故か彼が謝ってくれる。
「いえ。私が勝手に足袋のままで出てきたのが悪いので………。」
「私の肩に掴まって。傷を見せてください。」
「あ………。」
男は緋色の足を優しく掴み、足の裏を確認している。緋色は慌てて彼の肩に手を置く。
けれど、ここはそれなりに通行量がある道路だ。ただでさえ、緋色は着物を着ているので目立つというのに、目の前の彼はしゃがんで緋色の足に触れているのだ。すれ違う人達が、ちらちらとこちらを見ているのがわかり、緋色は恥ずかしくなってしまう。