嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも




 それを忘れないために、婚約指輪を身につけていきたい。
 その気持ちを泉にも伝えると、「わかったよ。」と言ってくれた。けれど、宝石をつけるのは止めたくなったらしく、後ろにつけるタイプをチョイスしていた。埋め込まれているので、作業の邪魔にもならないし、「手のひらを見るのは緋色ちゃんだけだしね。」と、泉はこのデザインを気に入ったようだった。
 そして、2人はお揃いの宝石がついた結婚指輪を選んだのだ。
 まだ完成はしていないので、結婚式の時に初めてつける事になるだろう。
 緋色もその日が楽しみになっていた。




 


 結婚式についても順調にスケジュールが決まり、結婚生活も不安も少なく過ごしていた。
 けれど、仕事は相変わらず憂鬱だった。緋色はやりたいことも見つらなかったし、事故の事もあり休みがちになっていたため、新しい職場に転職をした。そこは望の会社と取引があるところで、父の力で入れてもらったような場所だった。そのため、社員からは煙たがれる事も多かった。
 しかし、緋色の上司と愛音という先輩はとてもよくしてくれており、緋色は信頼をしていた。その2人に挙式に参列してくれないかと招待をすると、快く「おめでとう。ぜひ行かせてももらうよ。」と言ってくれた。
 それが嬉しくて、少しずつ会社に行くのも嬉しくなっていた。


 それに、もう1つ楽しみもある。
 出勤の時は1人で会社に来ているが、退勤の時は時間が合えば泉が会社まで迎えに来てくれていた。有名人なので、目立つことはなるべくさけたいのか、車で迎えに来てくれる。
 家に帰るよりも早く彼に会えるのが楽しみで、緋色は仕事を頑張れるようになっていた。




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