一生に一度の「好き」を、全部きみに。
体育祭が本格的に近づいてくると、クラス旗やハチマキの作成など、やることが多くて大変だった。
クラス旗は男子、ハチマキを女子が担当することになった。刺繍で名前を入れようという誰かの提案で、ハチマキ制作部隊は今日も大忙し。
「いたっ!」
慣れない縫い針でハチマキに刺繍していると、自分の指を刺してしまった。ちくっとした指先の痛み。左手の親指を確認すると、血が出てぷっくりと膨れている。
こりゃ痛いわけだよ、ついてないなぁ。
「ちょっと葵、大丈夫?」
花菜は手を止め、心配そうに私を見た。
「うん……なんとか……!」
「血がにじんでるよ。保健室いく?」
「大げさだよ、指に針が刺さったくらいで」
「ばい菌が入ったら大変じゃん! 小さな傷でも油断しちゃダメなんだからね!」
「舐めてたら治るってば」
スクールバッグからティッシュを出して血を拭う。
それでも大げさなほど心配してくる花菜に思わず笑みがこぼれた。
「そんなに心配しないでよ」
「なに言ってんだ、保健室いくぞ」
え?
後ろから咲が私の手元を覗きこんだ。