一生に一度の「好き」を、全部きみに。
あ、でも私、走れない……。
走ってゴールしなきゃいけないよね?
『借り物、借り人をした人はグラウンドを半周してからゴールに向かってくださいねー! そのままゴールに向かうと失格になりますので!』
どうやら他の人もゴールへ向かっているようだ。
「しっかりつかまってろよ」
「え……?」
頭であれこれ考えていると、身体がふわっと宙に浮いた。
「え、ええっ……!? さ、く?」
「いいから黙ってろ。走るぞ!」
ええっー?
「落っこちたくなかったら、俺の首に手回してしっかりつかまってろ」
「そ、そんなの無理だよ……っ」
だって、恥ずかしすぎるっ。
しどろもどろになりながら手足をバタつかせていると、周りから痛いくらいの視線を感じた。
「ほら、ゴールに向かうから」
「う、うう……っ」
あと数センチの距離に咲の顔がある。下から見上げる顔がひときわ輝いて見えるのは、汗のせいかな。
喉仏が目の前にあって、恥ずかしさでいっぱいで。