一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「あー、ムカつく!」

応援席に戻るとあからさまに瀬尾さんに睨まれた。横を通りすぎたとき、わざとらしく肘をぶつけられて身体がよろける。

前のめりに転びそうになったところを花菜が支えてくれた。

「ちょっと! 今のわざとでしょ?」

「花菜、いいよっ」

「ダメだよ。そういうのホントやめてよね」

「こっわー。ちょっと当たっただけじゃん」

「早瀬さん、ウザすぎ」

「ね!」

私のせいで花菜が悪く言われちゃう。

これまでたくさん助けてくれたのに、これ以上迷惑かけたくないよ。

「花菜、いこっ」

「葵……」

花菜の腕を引いて瀬尾さんたちから離れる。だけど背中には鋭い視線が突き刺さったままだ。

「感じわるーい!」

「きゃははは!」

高らかな笑い声が聞こえてきて、キリキリと胸が痛む。

応援席に座り、深く息を吸い込んだ。

そしてまた吐き出す。

だけど胸の痛みが収まることはなくて苦しいままだった。

疲れてるのかな。なんとなく動悸もする。

ドクドクドクドク、心臓の動きがいつもより速い。

とりあえずどこかで横になりたい。

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