一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「あたしはね、中学のときから鳳くんを見てきたのっ! 女子と仲良くなったりしなかった鳳くんが、あとからしゃしゃり出てきたあんたと仲良くしてるなんて許せるわけないじゃん!」

「…………」

感情むき出しにして呼吸を荒くする瀬尾さん。

心臓がギュッと痛んだ。

「瀬尾さんは……咲が、好きなの?」

「はぁ!? なんであんたにそんなこと言わなきゃなんないのよっ!」

明らかに声色が変わった。きっと図星なんだ。

ああ、どうしよう……。

意識が、飛びそう。

「うざすぎっ!」

背中にドンッと衝撃が走った。

バランスを崩し、フラフラしながらその場に膝から崩れ落ちる。

「弱い子アピールもホントいい加減にしてよっ!」

「っ……くっ」

苦しい。

胸が……痛いよ。

右手で左胸を押さえた。あまりの痛さに体操服の上からギュッと握る。

私……死ぬのかな。

「いつまで続ける気?」

「はぁ……はぁ。く、苦し……」

薬、飲まなきゃ……。

これは発作だ。

「ねぇ、聞いてんの? ちょっと!」

肩を揺さぶられる。

「ねぇってば……! やめてよ、ちょっと! まさか、本気……?」

「あ、う……っ」

「や、やだっ。ねぇ!」

だんだんと意識が遠のいていく。

「聞いてんの?」

「おい! なにしてんだよ!」

誰かの声が……する。

誰の……声だったかな。

私の意識はそこで途切れた。


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