一生に一度の「好き」を、全部きみに。

時間の感覚がなくて今何時なのかもわからない。

「体育祭は終わった。リレーのことは葵は心配しなくていいから」

「でも」

「もうすぐしたら早瀬が荷物持ってきてくれるから、少し休んでろ」

咲が私をここに運んだんだとしたら、ずっとついててくれたってこと?

もしかして、ものすごく迷惑かけちゃったんじゃ……?

「…………」

「俺が勝手に葵と瀬尾のあとを追いかけたんだ。リレーに出れなかったのは俺自身のせいだし、葵は今は余計なこと考えなくていい」

そう言いながら咲はゆっくり私の肩を押して横にしてくれる。そして顎先まで布団をかけてくれた。

あまりにも優しく微笑む咲を見て、私はそれ以上なにも言えなくて。ドキンドキンと胸が高鳴って落ち着かない。

「ずっとついててくれたの?」

リレーをすっぽかしてまで、どうして私なんかに。

「ああ、まぁ。心配だったしな」

普段の咲なら素直にそんなことを口にしたりはしないはず。それほど私を心配してたってこと?

「つーか、葵しか見えなくて、ぶっちゃけリレーのことなんて頭から飛んでた」

「……っ」

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