一生に一度の「好き」を、全部きみに。

ちらりと流し目で見られて、くすぐったい気持ちになる。照れているのか、咲の頬はほんのり赤かった。

「あんま見んなって。普通に恥ずい……」

私の目を覆うように伸びてくる腕。体操服から、しなやかな腕が覗いている。

「おい、聞いてんのか?」

「ごご、ごめん」

顔が熱い。握られている手から熱が伝わっちゃいそうで、私は思わず鼻先まで布団を持ち上げた。

『葵しか見えなくて』

『葵しか』

頭の中でその言葉が繰り返される。

どうしよう。

心臓が別の意味で痛い……。

ううん、痛いんじゃなくて苦しい。甘酸っぱくて、温かくて、優しくて。そんな甘い苦しさ。

今まで誰にも懐かなかった猫が、急に頬をすり寄せて甘えてきたみたいな……そんな感覚。

私は咲のその態度にとても弱いみたい。

どうすればいいの、この気持ち……。

咲への想いが確実に大きくなっている。もう隠しきれないよ。

私は……咲が好きだってこと。


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