一生に一度の「好き」を、全部きみに。

好奇の目の中に、鋭い視線がひとつ。遠くからこっちを見ている瀬尾さんだ。珍しく取り巻きがおらず、ひとりみたいだった。

目が合い、思わず身体が硬直する。

瀬尾さんは咲が好きだから私のことが気に入らない、そういうことだ。

世の中すべての人と仲良くできないのと同じで、クラスの人たちだってそれは例外じゃない。

合う人合わない人がいて当然だし、すべての人に好かれたいとも思わない。

でも……なにか心に引っかかる。このままでいいのかなっていう疑問。

「神楽さん、おはよう」

「倒れたんだって? 大変だったね!」

周りの席の女子たちに四方を取り囲まれた。

「実のところ、鳳くんとどうなの?」

「どうやって仲良くなったの? あたしも仲良くしたーい!」

「えっと、あの……」

迫力がすごすぎてあたふたする。

どうなのって言われても……。

うまく答えられなくて、愛想笑いを決め込んだ。

咲は咲で男子たちの輪の中でいつも通り澄ました様子。

噂なんて気にしてないみたい。

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