一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「っていうか、瀬尾さんもひどいよね!」
「殴られたんでしょ?」
「あたしは蹴られたって聞いた! それで神楽さんが倒れて意識失ったって。怖いよね〜!」
「怖すぎー! キツいとこあるし、超苦手〜!」
えっ……?
瀬尾さんが私を殴った……?
蹴った……?
背中を押されはしたけど、殴られても蹴られてもない。
記憶が曖昧だけど、背中を押されたのもそこまで強い力だったわけじゃないと思う。
それなのに、いつの間にそんな話に……?
「気に入らない子殴り倒すとか、女として終わってるよな〜!」
「俺、瀬尾さんのことかわいいって思ってたのに。さすがに引くわー!」
耳を澄ませると近くの男子たちもそんな話をしていた。
憐れむような目で見られて居心地が悪い。
私が倒れたのは瀬尾さんのせいじゃない。
あの日はたまたま体調が悪かっただけ。それなのに……。
「瀬尾さんを苦手な人って案外多いよねー!」
「わかる〜! かわいいけど、性格悪いもん!」
「ね〜!」
本人が近くにいるのに周りに聞こえる声量で話す女子たち。
瀬尾さんはただじっと座っているだけだったけど、周りの友達は居心地が悪くなったのか瀬尾さんから離れて教室を出た。