一生に一度の「好き」を、全部きみに。

それ以来瀬尾さんはひとりでいることが多くなった。

気を遣って声をかける友達たちとも距離を置き、休み時間のたびにひとりで教室を出ていく。

そしてチャイムが鳴るギリギリに戻ってきて授業を受ける、その繰り返し。

噂は消えることなく、それどころか全クラス、全学年にまで広まっていた。

瀬尾さんは加害者で、私はすっかり被害者扱い。

ときどき瀬尾さんと目が合うけど、睨まれているようで気まずくて。

どうすることもできないまま、時間だけがずるずるすぎていく。

一週間も経つと、瀬尾さんは完全にクラスから孤立した。

「今まで散々葵を傷つけたのは事実なんだから、いい気味!」

ここぞとばかりに悪態をつく花菜。

「あたしが言っても、葵は納得してないって感じだね。気にすることないよ、因果応報ってやつ。みんなの前で見せしめみたいに葵を傷つけるから、ここまで話が大きくなったんだよ」

瀬尾さんのことは苦手だし、できれば関わりたくはない。

でも……引っかかる。

「葵の気が済むようにしてみたら?」

花菜はやれやれといった感じで苦笑した。

「話したければ話したらいいし、このままでいいならなにもしなければいい。葵がしたいようにしていいんじゃない?」

私がしたいように、か。

花菜の視線を追うとそこには瀬尾さんがいて、思わず目が合った。

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