一生に一度の「好き」を、全部きみに。

瀬尾さんは不自然なほど思いっきり顔をそらして、教室からふらっと出ていく。

なにを話せばいいのかわからないし、嫌われてると思うと声をかける勇気もない。

でも……。

「私、ちょっといってくる!」

「はいはーい、いってらー!」

花菜は軽くそう言ってひらひらと手を振った。

「っていうか、あの子じゃない?」

「ホントだ、鳳くんの彼女!」

廊下に出たら出たで、コソコソと言われているのがわかって身が縮まる。彼女じゃないんですけど。

「お嬢様らしいよー!」

「すごーい!」

もういい加減にしてほしい。

それにしても、瀬尾さん、どこにいっちゃったんだろう。

ひと目を避けるなら、ひとりになれる場所にいくはずだよね。

ひとりになれる場所……。

しばらく考えて閃いた。

空き教室だ!

階段を上がって校舎の四階へ。

ひとつ目の教室のドアから中を覗くと、窓から外を見るようにして瀬尾さんが立っていた。

「瀬尾さん……!」

振り返った瀬尾さんは私を見て『なんであんたがここにいるの?』って顔。

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