一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「なんの用?」
「…………」
勢いで追いかけてきたから、言葉なんて考えてない。
「あたしが孤立して、いい気味だって思ってるでしょ?」
なじる声に怯みそうになる。
「殴ったとか蹴ったとか、あることないこと言われて迷惑してるんだけど!」
開き直った態度の瀬尾さんの目には、私への憎しみがあふれている。
瀬尾さんのペースに巻き込まれちゃダメ。
そう思うのに、胸がヒリヒリして言葉が出てこない。
「悲劇のヒロインぶってれば鳳くんに守ってもらえるもんね? この前倒れたのもフリだったりして!」
心臓がバクバクする。でも、ここで逃げちゃダメだ。たとえ苦手な人でも、ちゃんと向き合わなきゃ。
「ちがう……」
「はぁ?」
「フリじゃない。私、心臓病なの」
自分の声がやけに震えていることに気づいた。
拳をギュッと握って、大きく息を吐き出すのと同時に言葉を吐く。
「そのせいで倒れたんだ」
「なに、言ってんの……?」
これまでに見たことがないほど目を見開き、ゆらゆらと瞳を揺らす瀬尾さん。
「あんた、頭大丈夫? ウソつくのもたいがいにしてよ」
「至って正常だよ。こんなウソ言うわけないじゃん」