一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「で、どうだったんだよ?」
「え……?」
咲はムッとしながらも私にそんなことを聞いてきた。
「俺らのライブ、どうだったって聞いてんの」
「え、あ、ライブ……すごくよかったですっ!」
「当然だろ、そんなの。他にもっとなんかねーのかよ」
「あ、う、えと。あの、なにか……そう、ですね。メロディがとても優しいと思いました。まるで歌声に合わせにいってるみたいで、惹きつけられたというか。とにかくみなさん、優しかったです!」
さっきの感動が蘇って、心の奥がジンとした。窮地に立たされているというのに、この状況で笑えることにビックリする。
だけど、それほどよかったってことだから。
「優しい、か。なるほど、それは的を得てるな。咲は今日だけピンチヒッターで入ってもらっただけだから」
類さんが優しく私に教えてくれた。
「練習もほとんどできなかったし、ぶっつけ本番だったから、咲をかばってんのが無意識に音に出ちゃったんだな」