一生に一度の「好き」を、全部きみに。
揺れる想いと恋心
ひとりで空き教室を出た私。角を曲がった瞬間、壁に背を預けるようにして人が立っていた。
両手をポケットに突っ込んで気だるげな様子。
「さ、咲! なんで?」
おもむろに顔を上げた咲は、しどろもどろになりながら口を開いた。
「早瀬が、葵が瀬尾を追いかけていったっつーから」
「心配してきてくれたの?」
「別に、そんなんじゃないけど」
「そっか、ありがとう」
心配してくれたんだ?
わざわざ追いかけてきてくれたなんて、うれしすぎる。
「大丈夫だったのか? 瀬尾は?」
「まだ空き教室にいるよ。大丈夫、ちゃんと話せたから」
「そっか」
咲がホッと息を吐き出したのがわかった。
そんな顔をされたら、変に期待してしまう。
ドキドキだってする。
ダメダメ、考えるな。きっと咲にとっては、なんでもないことなんだから。
「屋上でサボらねー?」
そう提案された。
「サボりなんて、不良のすることだよ」
「たまにはいいだろ。葵は真面目すぎ」
なかば強引に、サボり決定。私もまだ教室には戻りたくなかったから、ちょうどよかったのかも。
「わぁ、いい天気!」
朝の屋上はまだ日が高く昇っていて、どことなく清々しい。
ブワッと強い風が吹き、慌ててスカートを押さえた。