一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「ぷっ、誰も見てねーよ」
「うるさいなぁ」
そうだよね、咲は私のことなんてなんとも思ってないんだもん。
だから私に興味があるわけない。こうして心配してくれるのも、友達だから。
うれしい反面複雑で、なにかを期待してる私がどこかにいる。
咲との間に『なにか』なんてあるはずないのに……。あったとしても、私にはそれを受け入れる資格なんてない。
一方通行でいるしかないの。
どちらからともなく床の上に寝そべった。初夏の風が頬をなでて髪を揺らす。
「咲は彼女作らないの?」
ポロリと漏れた本音に、咲が身体ごとこっちを向いた。意外にも近くに顔があって心臓が大きく飛び跳ねた。
平常心、平常心。
意識するな、私。
「なんだよ、いきなり」
やっぱり素直には答えてくれないらしい。
「ふとした疑問だよ」
苦し紛れの言い訳。
「彼女なんかいらない」
う、そんなバッサリと切り刻むようなことを言わなくても。なぜだか胸が痛くて苦しい。
バカ、それは期待してる証拠。ダメなのに……。
「つい最近までは、そう思ってた」
「え……?」
私を見下ろす熱を含んだような瞳。いつもより何倍も大人っぽくて色気がたっぷり。男の表情を浮かべる咲。
まさか、なんて期待に胸が高鳴る。