一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「今はどうなの?」
なかなか答えないから、気になって急かすように訊き返す。
「さぁ、どうだと思う?」
「あのね、私が聞いてるんだけど」
「付き合うとかはどっちでもいいけど、誰にも取られたくない相手はいる」
「好きな人がいるってこと?」
「そこまでは言ってない」
プイと顔をそらす咲。きっと図星だ。
そっか……咲には好きな人がいるんだ。
なんでこんなにショックを受けてるんだろう。
それほど咲を好きだから?
ううん、ちがう……。
咲の好きな人が、誰なのか気になって、その人のことが羨ましくて仕方ないから。
きっと、そう。
「はは、マヌケ面」
前髪をわしゃわしゃ乱された。
「ちょ、なにすんの」
「はは、デコ全開だな。ウケる」
目の前で微笑まれて、不覚にもドキドキした。
戸惑うほどの甘い笑み。
ときめいちゃダメなのに、咲しか見えなくなる。
「も、もう!」
ドキドキしてるのがバレないように背中を向けた。
静まれ、心臓。
そう願いながら。