一生に一度の「好き」を、全部きみに。

なんだか少しドキドキしながら立ち上がる。

こんな呼び出しは初めてだから緊張するっていうか、なんだろう。

告白……?

ないない、絶対に。

「いくんだ?」

「え?」

「あいつのとこ」

咲は不機嫌なオーラをまといながら低い声を出した。

「呼ばれてるから、一応」

「ふーん」

なんでそんなに不機嫌なの?

それにめちゃくちゃトゲがあって嫌味っぽい言い方。

私のなにが気に入らないの?

「突然すみません」

真っ赤になりながらペコペコ頭を下げてくる男子。久下(くげ)くんというらしい。

爽やかな印象の好青年で、花菜が騒ぐだけのことはある。

久下くんのあとを追うようにして歩きながら、頭に浮かぶのは咲のこと。

ぼんやり歩いてたら、いつの間にかひと気のない中庭まできていた。

「俺、神楽さんのことが気になってて」

さっきまでの初々しさはどこへやら、久下くんは慣れたように妖しくニコッと笑った。

「えっと、あの?」

「神楽さんと付き合えるなんて思ってないよ、さすがの俺も。ちゃんと自分の立場をわきまえてる」

さすがの俺も……って。

自分で言っちゃうんだ?

なにが言いたいのか、よくわからない。

急に雰囲気が変わった久下くんに、戸惑いを隠せなくて。ここまでついてきたことを少しばかり後悔した。

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