一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「思い出がほしいんだ」
「思い出、とは?」
一歩一歩距離を縮めてくる久下くん。ジリジリ後ずさっていると校舎の壁に背中がくっついた。
「そんなの言わなくてもわかるだろ?」
「え?」
キョトンとしながら首をかしげる。本当にわからないんですけど。
「俺と遊んでよ」
言葉の意味が理解できなかった。
遊ぶ?
「つまり、キスとかそれ以上のことがしたいんだよ」
「は!?」
あまりの衝撃に声が上ずった。
待て待て、意味がわからない。
「付き合わなくていいから、一回遊んでくんない? 」
「無理です。っていうか、嫌です」
頭おかしいんじゃないの?
今日初めて話したし、なんなら顔だって初めて見た。そんな相手とキスしたりできるわけない。
「いいじゃん、堅く考えないで気楽にいこうぜ」
「は、はぁ……?」
なにこいつ、本当に最低。
「俺、わりとうまいからさ。満足させられるよ、きっと」
「どうでもいいです、そんなこと」
これはやばい。早いとこ逃げなきゃ。
だけど、背中は壁、目の前には久下くん。退路を絶たれていることに今になって気づく。
もしかしてそれも計算のうち?
顔からサーッと血の気が引いていく。
ど、どうしよう。