一生に一度の「好き」を、全部きみに。
ついてこなきゃよかった……私のバカ。
「試してみてよ、俺を」
「い、いやっ!」
必死の抵抗も虚しく、手首をつかまれ、思いっきり壁に押し当てられる。痛さで顔をしかめた。
「やめてっ」
「大人しくしてたら、すぐ気持ちよくなるから」
ありえない……。
やだっ。
誰か助けて……!
恐怖から膝がガクガク震えた。
「やめろ!!」
背後から大きな声がして、久下くんは私の目の前から消えた。
ううん、正確には後ろから誰かに引っ張られ、大きくバランスを崩して尻もちをついたのだ。
それはあっという間の出来事だった。
眉を釣り上げ、不愉快さ全開の咲が黒いオーラをまといながら立っている。手にはスマホを構えて、久下くんをロックオン。
「いってぇ……っ! なんだよ、お前!」
ドカッ。
怒りをあらわにした咲が久下くんの真横の壁を蹴った。大きな音がして壁が揺れる。
「なな、なにすんだよ!」
「葵に手ぇだしたら、誰であろうと容赦しない」
あまりのその迫力に久下くんは一瞬にして青ざめた。