一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「俺が音に合わせてやってたんだよ」
咲にギロッと睨まれて、私の心は悲鳴を上げそうになる。自分を持っているというか、一本の太いブレない芯が通っているような力強い人。
サラサラの黒髪に鍛えられた筋肉質の身体。咲は大きな野望を秘めたそんな目をしている。
薄くて甘い顔立ちをしてるけど、中身が塩だからなのかキツく見えてしまう。
この中で咲だけは異質なオーラを放っていて、さらには私に敵意丸出しだから、仲良くなれそうな気がしない。
「はいはい、そうだな。咲ちゃんはガキでちゅね〜!」
「ガキじゃねーし!」
「類、おまえの弟だとは思えないほど生意気だよな〜!」
「はっは、まぁ、許してやってよ。これでもかわいい弟なんだ」
「一度心を許した相手には懐いてきてかわいいよなぁ、咲は」
「かわいいって言うな!」
「ところで、名前は?」
メンバーにイジられ、ムキになってる咲をよそに類さんだけが優しく声をかけてくれる。
「葵です。申し遅れました!」
「いやいや、葵ちゃんか。よし、覚えた」
うう、類さん、いい人。