一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「は? なに、お前らってそういう関係? つーか、そのスマホはなんだよ?」
「一部始終ムービーに撮ってる。これ拡散したら、お前は終わりだ」
冷静にも聞こえる咲の声には、怒りがにじんでいる。
咲は感情的になることなく、静かに怒るタイプらしい。
そういう人ほど怒らせると怖いっていうけれど、どうやら本当のようだ。
オーラがすごすぎる。
「お前色んな女相手にして、やりたい放題してるらしいじゃん。他校に本命もいるとか。そいつにこれ送ったら面白いだろうな」
「は、はは。やめて……やめてくださいっ」
顔を引きつらせて、変な笑みを浮かべる久下くん。
「す、すみませんっした! 未遂だし、ね? 許してくださいっ!」
「はぁ? ふざけんなよ。謝る相手がちがうだろ」
「かかかか、神楽さんっ! 本当にすみませんっ! 反省してますから、許してくださいっ!」
土下座でもするような勢いで頭を下げる久下くん。
「もういいから、どっかいって」
「ゆ、許してくれるんですか?」
「私の目の前から今すぐ消えて」
「は、はいいいいいい!」
ズザザザザーッと、久下くんは波が引くように尻もちをついたままの格好で退散した。