一生に一度の「好き」を、全部きみに。

あっという間に見えなくなって、咲とふたり取り残された。

「こ、怖かったぁ……っていうか、ありえないよね。最低」

もう大丈夫なはずなのに、さっきまでつかまれていた感覚が腕に残っていて身体が震える。

無理に頬を持ち上げると、全身がふわっとなにかに包まれた。

「無事でよかった」

「……っ」

耳元で咲の声がして、抱きしめられているとわかるのに数秒かかった。

たくましくてがっしりした腕。厚い胸板。なによりも、咲の温もりに心臓が早鐘を打ち始める。

「さ、咲……」

なんで、こんなこと。

「あいつの悪い噂、いろいろ聞いてたから。心配で追いかけたんだよ」

咲の声が震えている。腕もかすかに揺れていた。

「すぐに助けてやれなくて悪かった」

「ううん、きてくれてありがとう……」

「あいつに、なにされた?」

「え……?」

「ムービー撮ろうと思ったけどそんな余裕なかった。ハッタリかましただけで、一部始終見てたわけじゃないんだ」

そう、だったんだ。

「だから、あいつにされたこと全部教えて」

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